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読書と映画と小説と、平熱的な日々のこと

グッバイ呪いたち:「海辺のカフカ」

どうでもいい話だが、ブログの本拠地をFC2からはてなに移行していこうと思う。FC2さん、何年も使い勝手が全く変わらないのは素晴らしいことなのだが、余りに変わらなさすぎて色々と不都合も出てきたので。 

 

村上春樹の「海辺のカフカ」を十何年ぶりに再読した。きっかけは新海誠監督の「すずめの戸締り」で、なぜといえばあの映画の「海辺のカフカっぽさ」にある。旅行や石、猫といった個々のモチーフや、巨大な運命と個人の物語が錯綜する様なんかを観るにつけ、この小説を思い出したのだった。書店で買ってだいたい半年ぐらいかけて読んだのは、一行一行を丹念に耽読したというよりは、単純に時間がなくて飛び飛びの読書になってしまったからだけども。

ともあれ、これが素晴らしい読書体験だった。20年以上前の作品なのに、しっかり今の自分に届く感じがした。 

 

www.shinchosha.co.jp

 

読んだ方の多くが共感するであろうと思うが、「海辺のカフカ」は一見すると訳のわからない物語だと思う。 

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夏川椎菜の「コンポジット」:2022年触れてよかったもの

AppleMusicに今年多く聞いた音楽をいろんな観点からピックアップしてくれる機能があり、試しにやってみたら夏川椎菜まみれだったので笑う。一番聞いたアーティスト、一番聞いた曲、一番聞いたアルバム、どれをとっても夏川椎菜だった。今年を思い返してみれば、忙しかったこともあって映画や本に触れる機会が激減し、余暇時間自体が少なかったのだが、そのわずかな時間を投じた先がどこだったのかを端的に表すランキングである。それにしたって極端すぎて笑う。

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シン・学校の怪談か?:GHOSTBOOK おばけずかん

山崎貴監督といえば、ALWAYSや永遠の0の大ヒットメーカー、あるいはドラ泣きだとかドラクエだとかお涙頂戴だとかの言葉で色々な毀誉褒貶の評で語られがちな監督ではあるものの、個人的にはずっと足を向けて寝られない人であり続けており、それはひとえに「ジュブナイル」という映画を世にもたらしたことが大きい。90年代後半から00年頃にかけて、ファンタジーとロマンに溢れた子供向け映画の数々が映画館を賑わしていたが、SFファンタジーアドベンチャーであり子供向けの青春映画であり、CGをふんだんに使った技巧的な映画でもあるジュブナイルは、子供だった自分にとってロマンとは何かを銀幕で示して見せた映画の一つだった。当時でいえば、そうした魅力的な映画群の筆頭でもあった「学校の怪談」と並んで、子供時代の映画体験の一幕を華々しく飾っていたわけだ。

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2021年、読んで・見て良かった本、映画まとめ

2021年終了まで後数時間というところでこれを書き出しているが、はっきり言って全然時間がない。果たして年明けまでに間に合うのか。毎年記録しておくことが大事という意識で書いているので、今年はいつもよりも気持ち短めでいこうとおもう。

映画も本もまとめて記録するのはそれだけ量が少ないから。本・映画ともに今年は「これだ!』というのがあまり思いつかなかったので、全て順位なく記載。

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自分、不器用ですから:竜とそばかすの姫

広大なインターネット空間を舞台にした細田守監督作品といえば、古くは「ぼくらのウォーゲーム」があり、もうちょっと手前では「サマーウォーズ」がある。この10年来でインターネット空間の描かれ方はかなり様変わりした感があるが、改めて仮想現実をえがく細田守最新作「竜とそばかすの姫」も例外ではない。サマーウォーズ的な、万能なインターネットの世界、あるいは無限に人と繋がり合うことのできる希望的な空間としての描写は影を潜め、理不尽な暴力や他人への不寛容さ、むき出しの好奇心が横行する空間として描かれているから、今作の空間「U」は「OZ」に比べて正直、だいぶ治安が悪い。

 

 

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ラブ&ポップ:シン・エヴァンゲリオン劇場版:||

シンエヴァを観てきた。一週間ぐらい前に。

記念碑的な作品だし、何かしら感想を起こしておきたいと思ったのだが観終わってなかなか言葉が出てこない。それでいろんな人の感想を巡ったり、考えたりしているうちに、時間が経ってしまった。これ以上熟しても何も変わらなそうなので、思いつくままに書いてみることにした。

実に散漫になりそうな感じがする。この作品について話されている感想はだいたい長文が多いんだけど、これもそうなりそうだ。多分、誰にとっても考えをまとめるのが大変な作品なんだろう。

途中からネタバレ含む。

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二十数年後の旧劇

旧劇場版エヴァを映画館で観るという体験ができたのはシンエヴァ公開の恩恵だったのだが、肝心の新作の方が延期になってしまったので、映画館に向かう足取りがなんとなくふわふわしてしまった。本当ならば旧劇鑑賞後の数日後にはシンエヴァを観れていたのかもしれないという思いが抜けなかった。まあ、成ってしまったものは仕方ないので、割り切ってゴジラヘッドの東宝に向かったのが、数日前のことである。

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