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読書と映画と小説と、平熱的な日々のこと

ノルウェイ製の家具

ビートルズの「Norwegian wood」をノルウェイの森と訳すかどうかについては色んな意見があるそうだが、先日映画「ノルウェイの森」を見直して、エンドロールで流れる原曲が思った以上に全然「森」っぽいことを歌っていないと気づいた。やっぱりどちらかというと「森」よりも「家具」の方がしっくり来る歌詞である。ただ、映画はもちろん、村上春樹の小説の方も、「家具」ではなく「森」の話だという風に感じるし、むしろそういう風にしか見えない。その曲の印象は、深い森の中で迷っているような気分、と作中で語られる。

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2020年、読んでよかった本まとめ

例年同様わーっと羅列して、最後に5選。今年は色々読み散らかすというより、同じ作者の本を続けていくつも読む、ということが多かった年だった。あと、いいなと思った本が大体日常を描いている本だったのは、もしかしたら今年特有なんだろうか。もともと好きだったけど、もっと好きになったのかもしれない。

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2020年、観てよかった映画まとめ

誰しもが同じだと思うのだけれども、2020年は全然映画館に足を運ばなくなってしまった。代わりに配信サービスで映画を見ることが増えて、そうなると必然、新作ではない昔の映画を見る機会の方が増えた。観よう観ようと思って見れてなかった作品とか、全く観る気なかったんだけど視界に入って選んでしまったものとか。手軽な分だけ見る本数も増えて、結局数えてみたら2019年よりも多く観たことになっていた。とはいえ、映画館に足を運んで新作を観る体験に比べると、やっぱり何かが違う。映画館にもっと行きたかったなとつくづく思う一年だった。

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PS4で遊んで良かったゲームまとめ(24作品)

PS4で兼ねてからやりたいと思っていたゲームを一通り全てプレイし終えた。

 

元々ガッツリ系ゲーマーかというとあんまりそういうわけではなかったのに、PS4を買ってからコンスタントに楽しくゲームを遊びだしたのには理由があって、つまりは映画的な、演出偏重のゲームのラインナップがすごく多かった事に依ると思う。何かを競ったりするようなゲームよりは、じっくりと物語を楽しむような作品が好きな自分にとって、高い処理能力によって物語に没入させるような作品が多かったのは嬉しかった。

「観る」と「体験する」の垣根をいかに取り去るか、ゲームというメディアでどうやって物語を体験させるかの試みが面白くて、そういう意味ではすごくたくさんの素敵な体験をさせてもらったのがPS4というゲーム機だった。

 

遊んだゲームの感想と、最後にTOP10のラインナップでまとめ。

こうしてみると割と大作ばっかりやってる。

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早く人間になりたい:Detroit: Become Human

「Detroit: Become Human」は、アンドロイドが生活に不可欠になった近未来を舞台に、人間性とは何かを問いかけるアドベンチャーゲーム。高精細なグラフィックと、俳優のモーションキャプチャーによるリアルな演技、選択肢によって大量に分岐するシナリオ、そして何より感動的な物語は、ゲームならではの没入感でもって「ほとんど映画」の域に達している。PS4の名作に数えられるものの一つ。

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歯を食いしばって犬を打つ:The Last of Us Part II

(ネタバレなし)

 

幸いにして人を殺すことなくここまで生きてきたがそれは現実世界の話であって、ゲームの世界では随分と沢山の殺しをやってきたことに気が付いた。世界で最も評価されたゲームの一つと言っても過言ではない「The Last of Us」の続編をプレイし終えて、そんなことを思った。自分は人を殺したことがないが、もし誰かを殺したいぐらい憎んだり、あまつさえ刃を突き付けたり銃口を向けたりすることがあったのならば、どんな風に感じるんだろう。

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部屋と魔晄炉と私:FF7リメイク

説明不要の不朽の名作、ファイナルファンタジー7をプレイしたのは高校生の頃で、それはこの作品が発売されてからもう何年も後のことだった。なんなら、当時の最新タイトルだったファイナルファンタジー10をやった「後」のことである。最新ハードのPS2に、初代プレステ用のディスクを挿入して遊んでいた。懐かしい話だが、PS2には、今となっては世にも珍しい後方互換機能があったのである。PS2でPS1のソフトを遊ぶとちょっとだけ映像が綺麗になるみたいな話を聞いた覚えがあるが、全然実感できなかったことを思い出す。

そうして触れたFF7は、直前にやった10と同じぐらい面白くて、それはもう夜中まで起きてやったものだ。10の美麗な映像美を見た後だと、ポリゴン増し増しで描画された7のキャラクターはまるでレゴのようだったが、そんなものは面白さとはまるで関係がなかった。ディスクを何枚か入れ替え、映像が綺麗になってるのかどうかを気にすることすらなく、夜を通して遊んだ。もう、それはそれは面白かった。

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