36℃

読書と映画と小説と、平熱的な日々のこと

PS4で遊んで良かったゲームまとめ(24作品)

PS4で兼ねてからやりたいと思っていたゲームを一通り全てプレイし終えた。

 

元々ガッツリ系ゲーマーかというとあんまりそういうわけではなかったのに、PS4を買ってからコンスタントに楽しくゲームを遊びだしたのには理由があって、つまりは映画的な、演出偏重のゲームのラインナップがすごく多かった事に依ると思う。何かを競ったりするようなゲームよりは、じっくりと物語を楽しむような作品が好きな自分にとって、高い処理能力によって物語に没入させるような作品が多かったのは嬉しかった。

「観る」と「体験する」の垣根をいかに取り去るか、ゲームというメディアでどうやって物語を体験させるかの試みが面白くて、そういう意味ではすごくたくさんの素敵な体験をさせてもらったのがPS4というゲーム機だった。

 

遊んだゲームの感想と、最後にTOP10のラインナップでまとめ。

こうしてみると割と大作ばっかりやってる。

 

 

 

NieR:Automata

 

美しい映像と音楽、ともすれば残酷なストーリーに垣間見える生きるものへの温かな目線、、という風に書き連ねるとまるで映画のレビューみたいだが、確かにある種の映画と同程度に強烈な作家性を持った作品だった。ニーアシリーズは初めてプレイしたんだけど、間口の広さと奥行きの深さの両立が凄い。ゴシック、メカ、美少女、廃墟、ハードSF、実存主義、、みたいなとにかく人を選ぶ要素を並べておきながら、「遊びやすさ」は万人志向で、難なく物語に入っていけた。

機械が跋扈する世の中にあって、生存する、生きるとは何かを問う。

すごくSF的なテーマだと思うが、後述するいくつかの作品にも似たテーマ立てのものがあって、もしかするとゲームとSFとは凄く相性が良いんじゃないかと思う。

 

 

 

METAL GEAR SOLID V:GROUND ZEROES

 

メタルギアは初代PSのやつ以来もう何年かぶりにプレイしたが進化具合に驚いた。

あくまで「THE PHANTOM PAIN」の序章的な立ち位置なのでボリューム自体はそんなにないんだが、箱庭的な舞台で編まれる物語の緊張感はかなりのもの。敵地に潜入して囚われた仲間を救出し、バレないように脱出する、というのが基本的な筋立てだが、夜に刺すサーチライトの光や、耳を聾する雨音など、PS4のスペックを活かした舞台演出がめちゃくちゃにうまくて怖かった。ステージが一つしかないからこそ、みっちりと練り上げられたようなゲームデザインになっていて、随分楽しんだ記憶がある。

 

 

 

METAL GEAR SOLID V:THE PHANTOM PAIN

 

GROUND ZEROESの続き。前作とは打って変わって舞台がバカでかくなったのに、丁寧なゲームデザインや演出はそのままで、ええー小島秀夫ってすごいな!と思った記憶。だってこんなにボリュームあるのにバグも全然なくて操作性も快適。物語・演出みたいなところで語れることが多い人なんだろうけど、ちゃんと「遊びやすさ」は大前提として担保してるところは、ニーアのヨコオタロウさんとも通じるんだろうか。

それとは別に、映画的な演出力はさすがに凄まじい。サヘラントロプスという二足歩行巨大ロボットボスと戦う場面が今でも心に残っていて、激烈に舞う砂塵、混じる火の粉、見上げるような巨大なロボにプレイヤーが正面から対峙する。あの絶望感と迫力ははっきり胸に残っている。

 

壮大な復讐劇に始まる様々な意思の「連鎖」を描く物語だと思うんだけど、如何せんその「連鎖」の繋がる先が「プレイヤー諸氏、あとは任せた」という感じに終わるところが賛否両論で終わった作品。作品内で物語が閉じず、プレイヤーの想像や解釈、もっといえば行動を巻き込んでその先を描かせようとする試みは、確かにメタルギアサーガの明確な終焉を期待した人には物足りなかったのかもしれない。個人的には、こういう物語の描き方ができるのは、「クリア後」の世界をある程度設計できるゲームならではかなと思ったし、そこまでメタルギアにすごく強い思い入れもなかったんであんまり抵抗なかったけど。

連鎖する復讐心や、視点の相対化など、結構「The Last of Us Part2」に通じる要素がある。

 

 

 

Tom Clancy's The Division

 

世に出回るドル札に新種の病原菌が付着したことで感染が爆発的に広まり、一気に廃墟になった冬のニューヨークを舞台に、自警団的に戦う組織の活躍を描く。みたいな感じだったか。正直あんまり覚えていない。そして最後までやっていない。

オープンワールドでオンライン要素もありのゲームなので、物語よりもゲーム性の方にやや重きがあって、あんまり乗れなかった、というのもある。

でもSF的なガジェットの数々はワクワクするものがあった。オンラインで遊んで誰かがピンチになった時、さっとそういうガジェットを出して場の窮地を救うとちょっと嬉しかった。なんというか、ドラえもんになれた気持ち。

 

 

 

FINAL FANTASY15

 

気の毒なことにFF新作は何をやっても叩かれるという業を背負ってしまっている。今回のそれは特に激しかったように思う。

「壮大なファンタジー的世界観で、世界を危機から救う」大筋に対して、やっていることが「男4人で連れ立ってキャンプ」というさながら卒業旅行みたいな内容で、ある意味ファンタジーらしからぬものすごくミニマルなところに魅力を持ってきてるのがぐはぐに見えたんだと思う。ホストっぽいビジュアルも炎上の薪になった。

じゃあその卒業旅行がひどい出来だったかというとそんなことはなく、旅を共にするにつれて四人組への愛着も湧くし、旅先で食べる料理や、訪れる街の目新しさにはワクワクしたし、車で広大なオープンワールドを旅するのはロードムービー的な楽しさがあった。

 

つまり、世界を救うという目的ではなく、その過程の「旅」という手段をすごく重視した内容で、時間によって表情を変える自然や、車にのって広大な土地を進む体験など、ある程度処理能力があるメディアでじっくり時間をかけないと描けないことだった。FFというブランドを外した作品だったら、そこそこちゃんと良い評価をされたんじゃないかと思う。売れたかどうかはわからないけど。

でも、「ゲームを遊んだことが、体験として思い出になる」という意味ではちゃんとFFだったなと思った。

 

 

 

KINGDOM HEARTS -HD1.5+2.5 ReMIX

 

3の前の予習用としてやった。というかこのシリーズ本当に作品数が膨大だなと思う。

そして膨大な作品をある程度通して把握していないと新作が楽しめないところとか、本来だったらユーザーがどんどん払い落されていきそうなものなのに、3がちゃんと売れたのは凄い。ディズニーの力を感じる。

 

 

 

Marvel's Spider-man

 

スパイダーマンになれるゲーム。それ以上でもそれ以下でもないが、最初の「それ」が優秀すぎる。何より「ちょっとそういう気分になれる」のではなく、「めちゃくちゃそういう気分になれる」。ここに全振りしていて余分なものが一切ない。スパイダーマンが好きな人は好きだし、知らない人も好きになる。死角がない。

 

親愛なる隣人というニックネームの通り、スパイダーマンはヒーローの中でもやや一般人寄りである。

その彼が、一個人の人生とヒーローとしての大義の間で激しく葛藤する様もちゃんと描かれている。映画のスパイダーマンも十分すぎるくらい個人が感情移入しやすい親近感の持てる存在だが、ゲームのスパイダーマンは「自分」なので、移入の度合いもそれ以上に大きい。クライマックスは胸が痛んだし、多分これは同じ筋書きを映画でやったら全く違う受け取られ方をしただろう。自分ごととして感じられるからこそ、ヒーローとは何かを大いに自分の胸で考えることができた。さすがはマーベル印といったところ。

 

 

 

Star Wars Battlefront

 

これまた企画が優れた作品。スターウォーズの世界に入ってドンパチできる。以上。最高である。他に余分なものはいらない。

この「世界に入って」が肝で、本当にまるでゲームのセットに入ったような描写の細かさ。あの舞台、カメラに写っていないところはこうなっていんだろうなと錯覚するぐらい作り込みが半端ない。最強のごっこ遊びができる。

帝国側でも反乱同盟軍側でも、勝っても負けても「それっぽい」ので楽しい。映画の主たる登場人物になることもできるんだけど、あんまりそこにはそそられないぐらい、一般兵として立ち回るのが楽しい。自分がそこにいる気持ちになれるからだろう。

 

最高とか言いながら2はやってない。まあ、スターウォーズもいろいろあったからね。初代バトルフロントが出た頃が、一番全てがピークだったんじゃなかろうか。何がとは言わないが。

 

 

 

アンチャーテッド:海賊王と最後の秘宝

 

木曜洋画劇場的といえばいいのか、B級アドベンチャー映画を自分の手で動かせるゲーム。PS4のスペックをフルに使った実写のようなグラフィック、息をもつかせぬ展開、B級らしい話運び、そして何より日本語吹き替えの「それっぽさ」など、お金と技術と時間とセンスをフルに使って「B級の楽しさ」を描いている。何より、B級らしさとゲーム的な「派手さ」の混ぜ込み方が物凄くうまくて、時々A級アクション超大作みたいまド派手な場面が現れるのだが、それがB級的な雰囲気を盛り下げない。ゲーム的な面白さはちゃんと担保しながら、「それっぽさ」は無くさないという絶妙な采配。

 

実写版の話が出ているらしい。正直あんまり期待できないなと思うのは、このゲームは自分で「操作する」ことでありきたりな展開や設定も物凄く説得力が出てくるのに対し、客観的に見てしまったらほんとにただのB級映画だから。自分でコントローラーを握って操作することの没入感は、離れた位置からスクリーンで映画を見ることの比ではないし、没入感の有無は物語の見え方を大きく左右するなと感じる。

 

 

 

ワンダと巨像

 

PS3の名作のリマスター版。広大な美しい土地を愛馬で駆け回り、身一つで巨人を倒していく。

登場人物も非常に少なく、会話すらほとんどない。もっといえば各人物の背景設定すら不明瞭で、「巨人を倒す」という目的そのものが物語になっている作品。かなり淡々としているが、圧倒的に美しい世界観と寂寥感、ただ倒すというストイックな行為の節々から垣間見える情感など、言葉以外のものが非常に雄弁に迫ってくる。

そう書くと非常に単調な作品にも見える。実際は、ほとんど文字のない絵本、もしくは写真集をめくっているような感覚でプレイできる作品でありつつ、一方で巨人との戦いは怪獣映画のような迫力で描かれるので、濃淡がはっきりしていて飽きない。音楽担当はガメラシリーズなどを担当していた大谷幸氏。さもありなん。

全体的に「侘び寂びのあるアクションアドベンチャー」とでも言えばいいのか。

 

 

 

Gone Home

 

家に帰ったら誰もいなかった、というところから始まる一人称視点ゲーム。敵はでないしステージもない。ただ誰もいない邸宅で、少しずつ電気をつけながら歩いていく。その過程で、この家に何があったのか、なぜ誰もいないのかが明らかになっていく。

ホラーかと思ったら違う、サスペンスかと思えばそうでもない。ジャンル的な要素をなぞりながらも違うところへ着地させるのが非常にうまくて、優れた小説や映画を楽しんでいるような気持ちになれる。3時間ぐらいで終わるし。そして終わった頃には、「誰もいない」という事が当初と全然違った意味で見えてくるので、確かな読了感のようなものすら感じられる。

ゲーム的な競争や収集といった要素が殆どないので、ゲームなのかというとまた違ったジャンルのような気もする。

 

 

 

The First Tree

 

プレイヤーは美しい景色の中を狐になって歩き回る。実はこれ自体は主人公が見ている夢で、その夢の内容を主人公が奥さんに語っているのである。だから夢は、独立した幻想的な世界ではなく、その主人公の記憶や体験に基づくメタファーになっている。プレイヤーはそのメタファーの中を歩きながら、主人公の人生、特に親子の関係や生死についての様々な感情をなぞっていく。

こうやって書くと結構複雑な構造だなと思うのだが、やることは狐を操作して出てくるテキストを読むという非常にシンプル極まりない構造なのでとっつきやすい。というかほぼ「動かす小説」に近いのだが、小説と異なるのは「見せられているもの」と「語られているもの」が一致していないこと。「見ている景色」と「聞かされる話」の間に「操作する自分」がいるので、三重構造ぐらいの物語が立ち上がってくるという不思議な体験ができる。サンドイッチすぎてややゴチャッとする感覚もあるのだけれど、その複雑さを生死をめぐる哲学的な語りで回収しようとするので、なんというか、誤魔化されたような気持ちの妙な納得感が出てしまうところも面白い。

 

 

 

BIOHAZARD RE:2

 

バイオってやっぱりよくできてんだなーと思わされた一作。グラフィックが良くなったのはもちろん、陰影や色彩など様々な技術が爆上がりした結果、とにかくただそこを歩くだけで怖くなった。これに加えてゾンビが固くて銃で撃ってもなかなか倒れてくれず、あまつさえ無敵のやつに追っかけられたりと序盤の恐怖は凄まじいものがあった。翻って、弾薬や武器に余裕が出た中盤以降は、敵を倒して前に進むカタルシスと、物語が収束に向かっていくスピード感とで別種の面白さが出てくる。序盤はお化け屋敷、中盤以降はジェットコースターみたいな。

 

と言いつつこれも最後までクリアしていない。レオン編の表で終わった。

そういえば十何年前にやった時もレオン編表だけで終わった。

 

 

 

Life is Strange2

 

Life is Strangeの続編だが、続きというには話の性質がだいぶ異なる。前作が学園もの、今作はロードムービで、登場人物も舞台設定も殆どかぶってない。通じるテーマは前作に倣うところはあれど、作品としてはやや別物といった趣が強いと思う。

とはいえ、「人生は一度きりでやり直せない」、転じていえば人生そのものの厳しさ、過酷さを、一切巻き戻しの効かない選択肢設計で提示したこと、それによって主人公の兄弟二人が人生の奇妙さに流されていく様は確かに見ていて胸を打つものがあった。

 

 

 

JUDGE EYES:死神の遺言

 

キムタクが如く。木村拓哉を操作できるという一点が大いに話題になった作品。

歌舞伎町を模した町、神室町で、敏腕弁護士として腕を鳴らした木村拓哉。ある失敗によってキャリアを挫かれ、何でも屋じみた探偵業で糊口を凌いでいたが、ひょんなことから巻き込まれたヤクザ同士の抗争に首をつっこむことで、運命を大きく動かされていく。

 

「キムタクを歌舞伎町で遊ばせられる」というめちゃくちゃ感ばかりが話題に上がるが、シナリオが非常に良く出来ていて、探偵ものらしくコツコツと証拠を集めて事件の核心に迫っていく論理的な筋と、ヤクザものらしく情で話が進んでいく筋とが絶妙に絡み合っている。そこにキムタクはじめとした役者陣の存在感が華を添えるので、ゲームというより良く出来たドラマを見ている気持ちになる。というより、若干ゲーム部分が面倒臭くなるくらい。

 

キムタクの抜擢は本当に英断。木村拓哉は、「クールで完璧な二枚目」でありつつ、「そんなキムタクが何をやったら面白いか」を完璧に把握している、つまりキムタクを最も理解しているのは木村拓哉なんだろうと思う。キムタクがこれをやったら面白い、というネタ要素への選球眼と守るべきカッコ良さのバランスが絶妙で、それがこのゲームの「自由なところはとことん自由に、締めるところはきちっと締める」雰囲気にすごくマッチしている。

 

路上で戦うキムタクと富士そばやいきなりステーキで飯をくって「こりゃうめえ」と絶賛するキムタク、法廷で弁護人のために奮起するキムタクと酒を飲みすぎてまともに歩けないキムタク、あらゆるキムタクの多面的で自在な魅力がそのままゲームの自由奔放な魅力と直結しているし、プレイヤーはキムタクを通して最終的に「キムタク」ではなく「八神」という主人公を、そして神室町をこそ好きになってくる。ゲームってもちろんバーチャルなものなんだけれど、現実世界の要素を魅力の底上げ要素にもってきて、かつちゃんと成功しているというのがかなり面白い作品だった。

 

 

 

 

やってよかったベスト10:

 

 

 

 

10位:The Last of Us part 2

 

例えがアレだけどロシア文学みたいな作品。陰鬱で救いがなく、名前のついた登場人物の多さや長い時間にわたる物語を描くところなんかもそれっぽい。というかドストエフスキーっぽいのか。

もっといえば文学的な作品で、ある人間の実相を可能な限りリアルに読み手(プレイヤー)に伝えようとした作品だと思う。そういう意味では作家性が凄く強く、思想の押し付けと言われてしまえばそれまでなのだが、それくらい挑戦的なことをするには批評的にも商業的にも大成功した作品を土台にするしかなかったのかもしれない。

 

ゾンビパンデミックの起こった世界で、激しい憎悪に突き動かされて動く主人公エリーを追いつつも、時にカメラはスイッチして、エリーに憎悪を与える元凶になった人物のドラマも描く。視点が二分されることに伴い、各々が信じる正当性もどんどん相対化されていって、描かれるのは正しさや美しさみたいなものがどこにも転がっていない、どこまでも野放図に残酷さが広がる凄惨な地獄絵図である。

地獄絵図を歩かせるという試みは、小説や映画よりもゲームの方がはるかに効果的なメディアなのかもしれない。実際にこのゲーム、やっていて「戦争の再現」をしたかったんじゃないかと思えることが多々あった。フィールドとしての戦争というより、お互いが際限なくいがみあって救いのない、心理状態としての戦争。分断や不寛容が叫ばれる世の中にあって非常に批評的な作品でもあるし、ゲームが娯楽の枠を超えて現実世界の輪郭を照射する装置になろうとした試みにも見える。文学になろうとしたゲームと言えるかもしれない。

問題は、娯楽として評価される在り方を破ろうとするのには、やや代償が大きかったというか。これをラストオブアスに求めてないぞという層は一定数いたと思う。しかしこれほどの大規模な試みをやるには、業界でもある種特権的な位置にあったラストオブアスでしか出来なかった気もする。

ラストオブアスでやらなくてよかったことだが、ラストオブアスでしか出来なかった、だからやったというのであれば、作り手の目線はラストオブアスとしての進化よりも、ゲームそのものの定義を一世代先に推し進めたいという大義だったのではないか。それであれば、間違いなく後世に「ゲームと物語」の関係を問うた作品として世に残ると思う。実際にやってみてこれほど辛かったゲームは早々なく、それは確かに遊びの域を超えた体験だった。

 

 

 

9位:Firewatch

 

優れた導入という意味ではより上位にあげた作品と同等かそれ以上。プレイヤーを物語に一気に引き込む、もっといえばプレイヤーが物語に取り込まれるような感覚を抱かせるのに、ゲーム的なギミックをものすごく効果的に使っている作品で、正直この印象だけで上位に食い込んだ感も無くはない。それくらい素晴らしい導入だった。

もっとも、物語それ自体も楽しくて、森林監視員として孤独に働く主人公と、無線で遠くから通信してくる上司の関係を時におかしく、時に切なく描きつつ、森に忍び寄る謎を探索していくのは、派手さは無いけども品の良い文芸映画を見ているような趣があった。森の景色も美しく、広大ではあるものの歩き回っているうちにだんだん木々やエリアの位置関係が体に染み込んでくるような感じになるのは、本当に森に長く住まう監視員になったような気分になれる。決して大規模な作品ではないものの、不思議な心地よさが味わえる作品。

あと日本語訳が非常によかった。こういうウィットに富んだ会話がある種の主役になってる作品って、日本語訳の出来不出来でだいぶ見え方が変わってしまうと思うけど、丁寧で味のある会話文になっていた。

 

 

 

8位:ペルソナ5

 

ゴールデンじゃない無印の方をやった。すげえ長かったという感想が先に来るんだが、それでもやってよかったという気持ちも同時に残る。

 

高校生グループが「心の怪盗団」を名乗って悪い大人たちを成敗していく、という筋書きだけ書くとこっぱずかしくなるような内容なんだけれども、それをありとあらゆるスタイリッシュ要素でモリモリにカバーした結果、洗練されたRPGとしての爽快感と青春ものの不思議な郷愁を併せ持つ快作になっている。

実際に見て、触れて味わうことでわかる格好良さ、気持ち良さに溢れている作品で、なんとなく筋だけを追うとあまり魅力が伝わらないのではないかという気がする。街中をぶらぶら歩いている時に流れるゆるい曲とか、ステータス画面で悩む時に目に移る画面のかっこよさとか、コロコロ変わるキャラクターの表情とか演技とか、そういう色んなん情報が積み重なって「気持ち良さ」になっている作品という印象。ゲーム的にも、戦略を練って敵を一網打尽にした時の気持ち良さが最高なんだけれども、それがそのままイケイケな高校生の全能感をなぞっているような気持ちになる。イケイケな自分たちVS巨大な力を持った大人たち、というライトノベル的な構造なのに、すんなりと入り込めてしまうのはゲームプレイ部分がよく出来ているからだろうなと。

だからアニメ版も見たけど、ゲームの方がはるかにキレがあったと感じた。

 

 

 

7位:DEATH STRANDING

 

好きかどうかは正直わからないんだけど、絶対に「やってよかった」と言える作品。ゲームの進化ってグラフィックや処理能力みたいなところで語られがちだけど、「どのような感情を与えられるか」「そのためにどんな仕組みを使うか」の点でここまで進化を感じた作品はなかなかない。

 

崩壊した世界で荷物を運ぶ「運び屋」になって、孤立した人々の間を取りもち、アメリカ合衆国を再建するという物語。特徴的なのは、ゲーム的な遊びの部分とテーマ性の部分に髪の毛一本分ぐらいの隙間しかなく、物を運ぶというゲーム的な行為そのものが物語性に直結している点。オンラインを介して人と人とがゆるく繋がることで、実際に自分と他人との間の細く長い糸の存在を感じられるのは、ゲーム的な快感というよりはどこかインタラクティブアートじみた何かに「気づかされる」感覚に近い。ゲームが現実世界を射程に据えた設計になっているからこそ、その中で編まれる「孤立」と「繋がり」の物語が身近な問題として感じられる。

それ以外にも、テキストやムービー、キャラクター、世界観など、ゲームを構成する膨大な要素がこの「繋がり」というテーマ一点に収斂していて、一つ一つの要素それ自体が異常に煌めくクリエイティビティの産物なのに、これをキチンと統率して一点にまとめ上げている手腕が凄まじい。全てが奇妙なのに全然破綻していない、不思議の国のアリスのような作品。ゲーム性すらも物語の配下におく感じには、強烈な作家性を感じたけど、複雑かつ広大な内容の超SF大作のはずなのに、どこか一人の人間の頭の中を覗き見ているようなミニマルな感じにはどこか親しみも持てた。

 

小説やドラマや映画といった物語メディアに並ぶ位置にゲームを置こうとする感じがありありと伝わってきて、ともすればその挑戦的な熱量が強すぎると感じる時もあるんだけれど、なんだかそれもご愛嬌というか。なるほどゲームの進化ってこういうところで起こるのかと感じた。

 

 

 

6位:Detroit:Become Human

 

アンドロイドの存在が当たり前になった世界で、人間とは何か、人間でないとは何かを問う物語。プレイヤーは三体のアンドロイドの物語を追いながら、要所要所で現れる選択肢を選ぶことで、それぞれの生き様を操作していく。

ゲームというよりは「操作可能なドラマ」の印象で、主要な人物は役者さんを使っていたりするし、映像のクオリティはさすがPS4、もう殆ど映画やドラマと大差がない。一点違うのは、ドラマや映画だと時間的な制約があって描けない要素もゲームなら自由な操作パートを使って描写できることで、デトロイトはよくあるアンドロイドものの世界観ではあるものの、プレイヤー自身がその世界に触れ入っていけるからこそ、特別な世界に見えてくる。

 

面白かったのは、アンドロイド達が徐々に自我を得て、俺たちにも意思があるぞ、自我があるぞと主張しだすんだけど、それ自体もゲームの中の話なのでどこか悪い冗談みたいに見えてくるところ。これについてはエンディング後、タイトル画面を使った印象的なギミックが仕込まれていて、これまでずっと神の視点だったプレイヤーが神で無く、アンドロイド達が同等の位置に引き上がってくるような演出がされている。そういうところまで隙がないなあと思った。

 

 

 

5位:KINGDOM HEARTS3

 

それこそ13年ぐらい待ちに待ち続けたゲーム。買って帰る時には現実味がなさすぎてクラクラした。

何が良かった、みたいな事を言い出すとキリがないんだけれど、ずっとシリーズやってる人向けのゲームかなという気もする。いきなりここから始めるというのはシンドイと思うし。

個人的に思い入れがものすごく深いゲームの続編だから、という理由での「やってよかった」なので、他のゲームとはまた性質が違うようにも感じる。やってる時は本当に本当に楽しかった。

 

 

 

4位:十三機兵防衛圏

 

記憶を消してもう一度やりたいゲーム。

 

80年代日本を舞台に、13人の少年少女の時空を超えた群像劇、そして彼らが操る機兵と呼ばれるロボットを駆使しての防衛戦を描く。

 

この作品の肝はとにかく構成のうまさにある。例えばゲーム序盤、13人の少年少女がなぜ謎のロボットに乗って戦ってるかは全く明かされない。で、徐々に群像劇パートを進めることで、だんだんそれぞれの関係性、世界の謎、機兵とは何なのかが明らかになっていく。パズルのピースがはまるように徐々に世界観が見えてきた時の開放感は圧巻の一言。ゲーム的な防衛線パートと群像劇パートのバランスもほんとにちょうどよく、最後まで全く飽きがこない。

防衛パートももちろんやりごたえあって楽しいし、なんならずっとやりたいぐらいなんだけど、それでも気になって戻ってしまうぐらいシナリオの魅力がとにかくでかい。13人のキャラが時代を行き来する、一見ものすごく複雑な構成を殆ど破綻なく仕上げ、かつ二重も三重も謎と罠をはりめぐらしながら、常にクリフハンガーを置いてどんどん先へ読み進ませていく構成力。13人それぞれが超魅力的な個性を持っており、おまけにビジュアルも美しく繊細で、声優の演技も素晴らしいし、、シナリオに関する美点を数え上げたらきりがない。ややこしさ、難しさは制作側も織り込み済みで、キーワードや時系列整理などのサポートシステムがかなり充実しているのもサービス精神を感じた。

80年代タイムトラベルものかー、と舐めてかかるとボコボコにやられるくらい、日常的な高校の風景から始まった物語が跳躍する度合いが凄まじいのに対し、キャラクター同士の掛け合いや関係性という日常的な部分も魅力的で、このバランスの良さにも感服しっぱなし。個人的には「うる星やつら」みたいに少年少女がごちゃっとたくさん出てきていろんな関係性が生まれる話がすごい好きなので、そういう意味でも大変楽しかった。

 

優れたSF小説って、本を通じてものすごく遠くの世界に自分がいく感覚が生じると思うんだけど、十三機兵防衛権はそれと全く同質の感動を与えてくれた作品だった。なんというか、ロマンがある。

 

AAAタイトル的なものすごいグラフィックや演出、みたいな派手なことをしているわけではないので、PS4以外でも出せそうなのにと思うんだけれど、ゲーム的な快適さ、操作性、プレイ中の気持ち良さの点にかなり配慮している印象があるので、PS4の処理能力をこっち側に使ってるのかなとも思った。物語や演出の良さが話題に上がるけど「ストレスなく遊べる」ことに結構なリソースを割いている。

 

 

 

3位:FINAL FANTASY7 REMAKE

 

1位と2位がいなかったら1位だったわ。当たり前か。

 

自分は原作であるFF7をもうだいぶ昔にやって、あんまり内容を覚えてないんだけれど、それが良かったのかもしれない。長大なFF7の物語を分割することを不安視する向きもあったが、結果的には大正解で、実に丁寧で豪華な作りになっていた。

目に鮮やかな世界観、魅力的なキャラクター達、緊張感のある物語、華やかな音楽、映画的な演出に実写のようなグラフィック、画面を彩る美しく精緻な陰影、町の人々の息吹、やりごたえのある戦闘、遊んでいて感じる心地よさ。美点をあげると枚挙にいとまがなく、プレイ後には確かに自分がミッドガルという街にいたのだという気にさせられた。見惚れるような世界観で仲間と紡がれる熱い物語。ド定番なんだけど、定番をこれほど丁寧に、緻密に構成して「魅せて」くれた事、そしてそれを可能にした力量には一言、恐れ入ったの気持ちしか出てこない。

ゲームに求めるものが「映画的な演出で、ドラマチックな物語に没入させられる」なので、その点でいったら本当に100点満点に近い。PS4だからこそ出来たことをふんだんに詰め込んでいて、なんというかとても贅沢な気持ちにさせられた。

減点法で行くと殆ど減点要素がないとプレイ直後に感じていて、もしかしたら冷静に二週目やったら変わるかもしれないんだけど、サントラとかも買って思い出すにつけて「本当に良い体験だった」と思えるので、間違いなくやって良かったゲームだった。

 

 

 

2位:The Last of Us Remastered

 

実質的に2位と1位は同率なので、もはや順位をつけることにあんまり意味がない。しかもこれはもともとPS3で出ていた作品のリマスター版なので、純粋にPS4作品かと言うとやや疑問も残るが。

 

ゾンビパンデミックが起こった世界で、ひょんなことから連れ立って旅をすることになった中年男と少女の物語。映画でいえばレオンとかで散々描かれてきた組み合わせがなぜここへきて大いに受け入れられたかといえば、同じことでもゲームでやると没入感が桁違いになる点、更に製作者がそれをわかって「徹底的に没入感を高める」演出を入れまくった点にある。まさに「プレイする映画」にふさわしく、得られる緊張感も、感動も、答えの出ない問いを考える時のやりきれない感じも、全て「娯楽」のそれというよりは文芸映画のそれである。ことラストオブアスについてはそういう人間ドラマ的な叙情を大いに漂わせつつ、ゲームプレイ部分も非常にしっかりしているので、「ゲームでなければならない必然性」がちゃんとあった。ゲームを通じて人物たちに接することで、中年男ジョエルと少女エリーの間にある絆が、物凄く生々しく感じられるし、ただの「キャラクター」以上の存在感を持ってプレイヤーの心に残るんだと思う。

 

この作品は自分がPS4を買って割とすぐ遊んだゲームで、「ゲームって、こんなことまでできるようになったの」と大いに驚いた作品でもあった。まるで映画じゃないかと。でも映画とも何かが違う、明らかなゲーム的な手触りの中で、映画的な心の揺さぶりかたをしてくる。美しい映像、人物の細かな表情、セリフに浮かぶ感情の機微、一つ一つの要素が真摯に訴えかけてくる。そしてあのラストよ。何が正しくて、何が正しくないのか、宙ぶらりんのまま現実へ突き放されるような感を得たのは、後にも先にもこのゲーム以外にない。

 

ドラマ化の話が進んでいるそうだが、プレイヤーの感情が介入しないとただのウォーキング・デッドになってしまうんじゃないかと不安がある。

 

 

 

1位:Life is Strange

 

Playstation Plusという有料サービスに入ると定期的にいろんなソフトが無料で遊べて、ライフイズストレンジはその中で遊んだ一本だった。プレイし終えてすぐ、「これを無料でやるのは違う」と思って、パッケージ版を買い直すまでに至った。厳密にいえば有料サービスで遊んだんだからお金ちゃんと払ってる気がするんだが、そういうことではないのだ。お金がはらいたくなったのだ。

 

時間操作の能力を身につけた高校生マックスの青春譚を描く本作は、オレゴンの片田舎、その中でも主に学校という狭い空間を舞台にしている。学園青春ものと言ってみてもいいかもしれない。狭い世界での人間関係の真実を、時間操作の能力を足がかりにして覗き込んで行く。そうした中で、個々が抱える問題、あるいは人生のままならなさが垣間見えてくるのだが、それらが街全体を巻き込むとある謎と立ち並ぶことによって、物語は大きくうねりを見せていく。

時間操作の能力を得たマックスは、その万能感の中で、かえって自分の無力さ、人生が操作不可能であることを知っていく。時間移動ものの定番とも言える展開の中で、それでもなおこの作品が異常な輝きを持っているのは、高校の時にしか流れていないある種の無為な時間をも丁寧にすくい上げることで、悩み・葛藤し、それでも何もせずぼんやりすることもある青春の若者たち全般へ温かい眼差しを送っているように見えるからだ。つまりドラマチックな物語の中で、全くドラマチックでない瞬間、ただの授業の一幕や、校庭のベンチに座って暇を潰したり、友達となんとなく歩いたりとか、そういう時間をちゃんと大事にしていることにある。だからマックスの物語は、誰か知らない人の物語ではなく、自分の物語として感じ取れてしまう。誰しもそういう時間はあったのだ。そしてそういう時間が束になって、最終的に未来を形作っている。そういう特別な時間があったことを、本や映画ではなく、ゲームで知れるとは思わなかった。

 

一話目、廊下に出たマックスがイヤホンをすると音楽が流れ出し、周りの雑音がすっと消えていく。

そこでオープニングロゴがゆっくりと現れる。あの演出の繊細さに感じた感動が、この作品への好印象の中心にずっとある。